[Special Talk Vol.2]環境負荷の少ない家を実現する上で、断熱材の果たす役割は大きい。

環境負荷の少ない家を実現する上で、断熱材の果たす役割は大きい。

1990年代の初頭あたりから、「公害」という言葉と入れ替わるように「環境問題」という言葉が登場し、時代のキーワードになりました。それに歩調を合わせるように、住宅の世界でも「環境共生住宅」や「エコ住宅」、「高断熱高気密」という表現が使われるようになってきました。しかし、これらの言葉は、その内容や定義が人によってばらばらで、何をもって「環境共生」と呼ぶのか、熱損失係数がいくつなら「高断熱」になるのかなど、あやふやな部分が数多くあるような気がしています。

そのようなわけで、私自身が設計している住宅が、いわゆる「環境共生住宅」や「エコ住宅」と呼べるものなのかは良くわからないというのが正直なところですが、やはり「環境に配慮した住宅」…もう少し具体的にいうと、広い意味での「環境負荷の少ない家」を推進していきたいという気持ちは持っています。

このことを踏まえて、環境保全のための大きなテーマであるエネルギー問題、そしてそれと密接に関わるCO2排出の問題などを解決していくには、できるだけ住宅の断熱性能を高め、熱損失を小さくしていくことが不可欠です。そのために断熱材が重要な役割を果たすことは間違いありませんが、「環境負荷の少ない家」というものを広い視点から捉えた場合、断熱材の種類などにも目を向けることが重要であると思っています。

環境のことを考えたら、どの断熱材を選ぶかも重要なポイント。

断熱性能の高い住まいを実現するには、もちろん断熱材を使うことが不可欠です。また、当然のことですが、断熱材を製造するためには原料が必要ですし、エネルギーも必要です。

つまり、1軒の住宅に使われる断熱材の量がどんどん増えていくということは、それだけ消費される資源の量も増えていくということになります。断熱性能をどんどん上げていくことだけを考えた結果、資源の枯渇という別の問題が起こらないとも限らない…そう考えると、「環境負荷の少ない家」を実現するためには、広い視野で判断するバランス感覚も大切なのではないでしょうか。そこで考えなければならないのが、どのような断熱材を使用するかという問題です。

たとえば、現在国内で住宅に使われている主な断熱材には、石油を原料とした発泡プラスチック系のものと、グラスウールやロックウールのような無機系のものがあります。グラスウールの場合、その原材料の90%以上が、ガラスびんなどとして一度使用された後の廃ガラスを再利用しています。石油という資源は限りがあるものですし、日本ではそのほとんどを輸入に依存していることを考えると、どの断熱材を使用するかについては、十分に配慮すべきだと思います。

さらに、建設現場や住宅メーカーの工場などから出る残材や端材がどのように再利用されているかという面も考慮する必要があると思います。「広域認定制度」という制度がありますが、これは、出荷された後の自社製品の残材や端材を回収して、再び製品を作るために再利用することを認められたメーカーが認定されるという制度です。断熱材を選ぶ際に、この「広域認定制度」を取得しているメーカーの製品かどうかということも、1つのポイントになると思います。

また、2007年に公開された戸建住宅用の環境性能評価ツール「CASBEE住まい[戸建]」には、評価軸として6つの項目が設定されています。そのうちの1つ「LR2・資源を大切に使いゴミを減らす」という項目では、「リサイクル材」や「広域認定制度を取得しているメーカーの製品」などを使用した場合、ポイントが高くつくように設定されています。

これからの時代、完成品の建材からもう少し上流までを見据えて考えることも大事になってくるのではないでしょうか。

環境負荷の少ない家づくりを、自らも実践。

現在、私が住んでいる家は自ら設計したものですが、冬場には氷点下10~15℃にもなるという岩手県内陸部の気候特性を考慮して、十分な断熱性能を確保するように計画しました。実際に使用した断熱材はグラスウールが主ですが、一部には廃木材と樹皮を原料とした「インシュレーションボード」も使用しています。

冬場の暖房は、リビングにある薪ストーブ1台でまかなっていますが、家全体で十分な暖かさを感じることができており、とても満足しています。南面の開口部を大きく取ったため、真冬でも天気が良ければ、明るい陽射しのおかげで暖房しなくてもぽかぽか暖かいといった感じです。

また、暑い時期への対応として、南面に出の深い2mほどの庇を設け、室内に直射日光が入らないようにしています。さらに、1階の低い位置と、吹き抜けの上の高い位置に通風用の小窓を設けて、夏の間はほとんどこの窓を開放しています。おかげで、暑い夏場でもエアコンなどに頼ることなく、快適に過ごしています。

内田先生が自ら設計した自宅。「岩手の恵みで快適な暮らしを」がテーマで、高い断熱性はもちろん、自然エネルギーを活かしたパッシブソーラーシステムなども導入し、環境負荷の少ない快適な住まいを実現している。第2回サステナブル住宅賞・住宅金融公庫総裁賞を受賞(2007年)。

※この続き(Vol.3)は、2009年5月下旬の発行予定です。

プロフィール

内田信平(うちだ・しんぺい)
1965年宮城県生まれ。東北大学工学部建築学科卒、早稲田大学大学院理工学研究科修了。一級建築士。‘91年に旭化成工業に入社、工業化住宅の設計に携わる。その後、’94年に独立、戸建住宅を中心に設計・監理業務を行う。2001年より現職。岩手で暮らすようになって、「住宅を建てるための木材は山に生えている木であった」というあたり前のことを実感。以来、地元の森林資源をいかに活用するかということを自らのテーマとしている。大学での教育、研究をはじめ、建築専門誌への執筆、講演会などでも幅広く活躍中。

『建材・設備はどこで
何から作られているのか』

鉄筋やコンクリートをはじめ、住宅建設に欠かせない内装材や断熱材などの建材、キッチンセットや換気扇といった設備はどのように作られているのだろうか。このような疑問に応える建材・設備に関する調査報告書。足かけ3年半、総移動距離26,000㎞にも及ぶ調査内容は、さながら「建材・設備版グレートジャーニー」ともいえるものである。

(内田信平著、発行:(株)エクスナレッジ、2,400円+消費税)

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