[Special Talk]住まいの断熱性向上が求められている時代。

地球温暖化の防止に大きく貢献する省エネリフォームが、断熱業界の追い風になる。

着実に成長しつつある、省エネリフォーム市場。

今回は、既存の住宅の断熱性を高める省エネリフォームに関して、その意義やメリット、断熱業界に与える影響などについてご紹介したいと思います。

一般的に住まいづくりというと、すぐに新築を中心に考えてしまいますが、少子高齢化による住宅ニーズの減少や、100年に一度といわれる不況下で新築戸数が年々減少していく傾向にあることなどを考えると、住宅の断熱化によるCO2削減という面では、新築だけにターゲットを絞っていても、あまり大きな効果は期待できないと思います。

そこで注目されるのが、数の上では圧倒的ともいえる中古住宅の断熱化です。今後は既存の住宅を断熱化するという省エネリフォームが求められる傾向にあり、その市場も着実に成長していくだろうと期待されています。その根拠は、1980年代の高度成長期に大量供給された住宅が築20~30年を迎える時期にあり、これらの住宅の断熱化を推進することが大幅なCO2の削減に結びつくからです。現在、日本の住宅数(2008年10月1日時点、総務省調べ)は5,759万戸、そのうち65歳以上の高齢者がいる世帯は1,821万戸となっています。5年おきの調査ですが、先に述べたように少子高齢化が進むにつれ、このような世帯の住宅も、改修・リフォームの対象となるでしょう。

また、省エネリフォームの推進によって、国内に約800万戸あるといわれる空き屋の品質が向上すれば、住宅の長寿命化や良質な中古住宅市場の確立にもつながり、CO2の削減だけでなく、建築資源の節約、建設廃棄物の減少という効果も期待できると思います。このような意味からも、しっかりとした省エネリフォームを行って住まいの断熱性・気密性を高めることは、住んでいる人の健康面だけでなく、社会的にも大きな意義のあることだといえます。

これからは、断熱材メーカーや施工業者の方々にとって、省エネリフォームという言葉と行動が、今後の成長促進を左右するキーワードになっていくと思います。

省エネリフォームへの期待と課題。

11年後の2020年までに、日本の温室効果ガスを2005年比で15%削減する(1990年比で8%の削減)。現在、政府は、このような中期目標を掲げて地球温暖化防止への取り組みを加速させようとしていますが、この目標値を達成する上で中古住宅の省エネリフォームが不可欠であることはほぼ間違いありません。

ちなみに、住宅分野におけるCO2排出量は依然として増加傾向にあり、アメリカやヨーロッパ諸国などと比べても、日本はかなり立ちおくれているといえます。

このような現状を打破するために日本政府では、省エネリフォームに対する税制上の優遇措置や補助金制度などを充実させており、たとえば住まいの高断熱化を実現するリフォーム工事に対して、その費用の3分の1を国が負担するというような制度の導入も検討されています(詳しくは国土交通省のホームページをご覧ください・右記参照)。

このような現状や先に述べた状況などから判断すると、省エネリフォーム市場が今後もますます拡大していくことは明らかです。断熱業界に対する要望や期待も高まっていくことが予想されるでしょう。硝子繊維協会が次世代省エネ基準に対応した「マイスター認定制度」をスタートさせたことも、時代のニーズに応えたひとつの動きだと思います。

省エネリフォームによるCO2削減をさらに進める上で、他に重要な要素があるとしたら、それはリフォーム工事に関する申請制度を整備することかもしれません。このような制度が確立され、個々の住まいのリフォーム履歴がしっかり管理されるようになれば、より断熱性・気密性に優れた住まいを増やすことにもつながり、住宅分野のCO2削減もさらに加速しますからね。

地球温暖化への確かな対応が求められる中で、不可欠な要素として注目されつつある省エネリフォーム。それが断熱業界にとって、ひとつの追い風になることは間違いないと思います。

ただその一方で、正しい製品供給や適正価格、正確な施工など、メーカーや施工業者に対する企業努力も求められてくるでしょう。そのニーズに的確に応えていくことが、断熱業界の確かな信頼性に結びつくことは言うまでもありません。

プロフィール

坂本雄三
(さかもと・ゆうぞう)
1971年、北海道大学理学部卒業。78年、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程を修了し、建設省(現・国土交通省)建築研究所に入所。90年名古屋大学工学部助教授、94年東京大学助教授を経て、97年より現職。専門は建築環境工学で、特に熱環境、空調システム、省エネルギーなどの分野に精通している。国土交通省社会資本整備審議会専門委員、東京都環境影響評価審議会委員なども務めている。

住宅の省エネリフォームガイドブック

この冊子は、住宅の省エネルギー性能の向上を図るため、省エネリフォームの実施事例を東京都が募集・評価し、省エネリフォームを検討する際に役立つ技術情報などをまとめたものです。坂本先生も評価委員会の委員長として参加しています(東京都都市整備局発行)。

省エネリフォームに関する減税措置や補助金については、国土交通省のホームページをご参照ください。 住宅リフォーム・ローン減税 住宅の省エネ改修促進税制