いかに暮らしやすい家にするか、それを実現する大きなポイントとなるのが断熱性です。南会津は雪国ですから冬の温かさが非常に重要なのです。この寒い土地で、暖かな暮らしは至極の贅沢ともいえるものです。
同時に暖房にかかる費用をいかに低くするかというご提案も重要です。寒さが厳しい場所では暖房費がばかになりません。 多くの方が30~35年という長期の住宅ローンを組まれて住宅を建てますが、住宅ローンには住んでからのランニングコストは含まれません。月々の暖房費がローンの返済額に匹敵するような家が、本当に暮らしやすい家といえるでしょうか。
私は、建物の性能を上げ、設備をミニマムに設計することが、お施主様にとって末代までの財産になるのではないかと考えています。 そう思ってきたなか、今回、縁があって200㎜断熱に出会い、チャレンジできたことは、とても大きな出来事でした。
そして3つ目のご要望が冬場の温かさを考えてほしいということです。
当初はグラスウール105㎜の次世代省エネ基準仕様を提案していましたが、さらに高いレベルの仕様をご提案するため、セルロースファイバーや吹き付けなど色々と検討しましたが、どうしてもコストが高い。そこでNPO法人新木造住宅技術研究協議会の会沢事務局長にどのような断熱、暖房がベストチョイスかと相談したところ、200㎜断熱のモニター事業を実施していることを教えていただいたのです。QPEX(新木造住宅技術研究協議会が開発した暖房エネルギーの計算プログラム)を使って当初の次世代省エネ基準仕様と200㎜断熱仕様を比べたところ、Q値(熱損失係数・W/(㎡・K))は2.467から1.311に大きく下がることがわかりました。灯油消費量でみると、3,128リットルかかっていたものが1,253リットルと、ほぼ6割削減できます。
もちろん断熱仕様だけではなく、暖かな暮らしを実現するため、そのほかにもさまざまな配慮を行っています。暖房は床下放熱暖房システムのほかに補助暖房として薪ストーブを設置。また、雪国は日射量が少ないことから、南面には特注の木製サッシを採用し、大きな開口を取っています。
Y邸(福島県南会津郡南会津町)は、ご夫婦と子供二人、そしてご両親という二世帯住宅で、延床面積は約70坪あります。
当初、Y様からは大きく3つのご要望がありました。まず、ご夫婦と両親の生活ゾーンを明確に分けてほしいということ。お父様は材木業を営まれており、非常に朝が早く、夜も早く休まれるので、生活の時間帯が大きく異なるためです。Y邸は南面正面に玄関を設け、向って右側をご両親、左側をご夫婦の生活の場とし、廊下で隔てています。
2つ目が木を活かした家づくりとすることです。実は、今回の家づくりに使った木のほとんどが、お父様が10数年前から取り置きしてきたもの。良い家をつくりたいという夢を持ち、選び、保管してきたものなのです。小屋一軒分の材木を見て、大工さんとともに身が引き締まる思いでした。
お施主様から支給された材ですから替えがありません。そしてクリ、ケヤキ、ヒノキ、カエデなど選ばれた材木のなかには7mのクリなど、今ではなかなか見ることができない材もありました。ですからY邸は構造材から造作材まで、ふんだんに良質な国産材を使った家となっています。
実際の暖かさについては、Yさんから「以前暮らしていた築30年ほどの家に比べて、暖かさがまったく違います」との言葉をいただきました。以前と同じように布団をかけて寝ると汗ばむほどだそうです。 実際の暖房費については、まだ引っ越されて2カ月経っていませんのでよく分からないこともありますが、計算上では暖房に使う灯油の使用量は1日9~10リットル程度となっています。補助暖房として薪ストーブを設置していますが、まだ木が落ちついておらず、木割れの心配があることから今年は使う予定がないそうです。薪ストーブを併用すれば暖房エネルギーをさらに下げることができそうです。
この地域では昔から部屋を小割りにし部屋ごとに暖房します。天井を高くし、部屋を大きくすると暖房効率が悪すぎるのです。しかし、Y邸はリビングの南面に大きな開口を設け、非常に明るいリビングとなっています。これからは少なくとも次世代省エネルギー仕様が必要です。
ここはⅡ地域に当たりますが、Ⅰ地域の南部と捉えた方が暮らしやすい家を提案できます。200㎜断熱は、そうした地域性からもお勧めしたい仕様で、今後も是非、提案していきたいと考えています。
設計者:会津デザイン工房 代表 桑名誠 施工業者:室井建築
現場:福島県南会津郡南会津町田島
断熱地域区分:Ⅱ地域
建築規模:木造2階建 延べ床面積 229.24㎡ 建築面積 171.41㎡
QPEXによる試算値 | 当初設計 | 実施仕様 |
---|---|---|
熱損失係数(Q値) (W/(㎡・K)) |
2.467 | 1.311 |
灯油消費量(リットル) | 3,128 | 1,253 |
屋根断熱 | ハウスロンeキューズ16KHG 105㎜ | フルカットサン16KHG 235㎜ |
壁断熱 | ハウスロンeキューズ16KHG 105㎜ | フルカットサン16KHG 100+100㎜ |
基礎断熱 | 押出法ポリスチレンフォーム3種50㎜ | 押出法ポリスチレンフォーム3種75+25㎜ |
開口部 | アルミPVCサッシ 複層ガラス | PVCサッシ 遮熱Low-E複層ガラス |
防湿層 | 断熱材付属防湿フィルム | 別張り防湿シート |
会津デザイン工房が目指しているのは「納得する住まいづくり」です。
お施主様は、予算のなかで要望を叶えて欲しい、と強く求めていらっしゃいます。そうしたご要望に対し、どのように応えていくか。私は、暮らしやすい家にすることが非常に重要だと思っています。
大げさかも知れませんが、私はお施主様に幸せになっていただきたい。家づくり自体は幸せになるための十分条件ではなく、家をつくったからといって幸せになるとは限りません。しかし、私は、会津デザイン工房でつくったら幸せになった、そういう家づくりをしていきたいと思っています。それが私の思う「納得する住まいづくり」です。
お施主様から「家はこれ一軒でいいや」と言っていただけた時はとても嬉しかったですね。本当に満足頂けたということですから。
図面を引いている時は、本当にこれでよいのか、お施主様が求めている家はこれなのか、と常に悩み続けています。ですから、お引き渡しの時に「イメージ通りですね」、「多くの人に見ていただきたいので、見学会を開きましょう」といった言葉が励みになります。
平成17年に桑名建築設計室をスタート、この2月に会津デザイン工房と名称を変更しました。しかし、「納得する住まいづくり」に取り組んでいく、という私の考えは変わりません。
今回の200㎜断熱への挑戦は非常に有意義なものとなりました。色々なことに取り組むほど、お施主さんに何を提案すれば一番喜ばれるか、多くの選択肢が増えます。これからも勉強を続けていかなくてはなりません。
私は、お施主さんと打ち合わせをするとき、まず、25年間のライフスタイル表をつくっていただきます。今、小さな子どもがいても、25年後にはきっと巣立っています。もしかしたら二世帯居住で孫がいるかもしれません。その時には吹き抜けに床を張って部屋をつくるとか、将来をイメージして家づくりを考えていただきたいからです。
今回のY邸は二世帯住宅ですが、ご両親に「孫が欲しがるおじいちゃんの家」でいきませんか、とお話しました。将来、「この家は僕がもらうよ」とお孫さんが言うような家にしましょうとご提案したのです。財産として引き継げるような家づくりをしたいと思っています。
パラマウント硝子工業株式会社
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copyright © PARAMOUNT GLASS MFG.Co.,LTD. 2004
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1.100mm + 100mmの付加断熱が価値を生む
次世代省エネルギー基準に対応する戸建設住宅では、年間エネルギー使用量を大きく削減する事が出来ます。たとえば、4人家族で120㎡程度の住宅に暮らす場合の年間灯油使用料は、北海道や東北の寒冷地で1500L、温暖な地域では600~1200L程度で済みます。しかし、さらに高レベルな仕様にすることで、その半分程度の暖冷房エネルギーで十分快適に暮らす事が可能です。